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機関誌「産業立地」バックナンバー一覧

機関誌「産業立地」

VOL.61 No.2 2022年3月号
≪特集≫
産学共創で育てる地域の専門人材

【専門人材の育成と大学への期待】

 産業全体のイノベーション創出に加え、Society5.0やSDGsによる持続可能社会が志向される現在、高度な知識・技術を備える専門人材の存在が以前にも増して重要視されている。地域において、こうした専門人材の育成を担っているのが、大学をはじめとする高等教育機関である。
大学は、地域社会からの要請によって設立され、建学の精神に基づき、特色を活かした教育活動を展開するとともに、他の高等教育機関と役割を分担しながら、若い人材を地域へと送り出してきた。現在も、数理・データサイエンス・AI教育の推進、文理の枠にとらわれないSTEAM人材の育成、地元企業に向けたインターンシップ・リカレント教育の拡充など、地域で必要とされる人材像に応じて、知の拠点に留まらない様々な役割が期待されている。

【政策による大学と地域の関係性の変化】
 大学に対し、地域との関係性を再考する契機をもたらしたのが、文部科学省による2013・2014年度の「地(知)の拠点整備事業(COC)」と、翌2015年度からの「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」である。地方創生の高まりと軌を一にするこの2つの事業だが、方向性はやや異なる。
最初のCOC は、大学に地域志向の教育、研究、地域貢献を行うための組織改革を促すものであった。一方、COC+では、大学と自治体、地域企業、他の大学等が連携し、育成すべき人材像を定めた上で、雇用の創出と人材の地域定着を図ることが目的とされた。要は、COCが大学の内側に向けたもので、COC+は大学とその外側、つまり地域との関係性を再定義したものと整理できる。なお、これらの事業の方向性は、2020年度より始まった「大学による地方創生人材教育プログラム構築事業(COC+R)」にも引き継がれている。

【地元志向の高まりを人材定着の好機に】
 現下のコロナ禍によって、大学教育のあり方も大幅な転換を迫られる中、地域にとっては思わぬ形で追い風が吹き始めた。学生の地元志向の高まりだ。大都市圏での生活リスクが高まったことで、地元での暮らしやすさが見直され、また疲弊した地域産業を支える力になろうと、地元就職やUターン就職を希望する学生が増えているという。こうした流れを一過性のものとしないためにも、地域における専門人材の受け皿づくりは急務と言えよう。
そこで今号の特集では、地域の産業界と連携し、専門人材の育成に邁進する各地の大学の取り組みについてご寄稿いただいた。自らの地域における大学の存在意義を見つめなおすきっかけとなれば幸いである。


≪目次≫

視点

人的資本の協創と地域発のイノベーションに向けて
信州大学 副学長/総合人間科学系 教授 林  靖人

神戸市長 久元 喜造
聞き手:一般財団法人 日本立地センター 専務理事 上野  透

特集
産学共創で育てる地域の専門人材


地方大学にみる産業人材育成のあり方
長野県立大学 グローバルマネジメント学部 教授(人材育成学会 常任理事) 宮下  清

広島大学におけるデジタルものづくり領域での人材育成
広島大学 デジタルものづくり教育研究センター センター長 林  隆一

「薬都とやま」を支える専門人材育成への取り組み
富山県立大学 「くすりのシリコンバレーTOYAMA」事務室
UEA (University Education Administrator) 髙井 道雄

燕三条地域の企業と連携した高度ものづくり人材の育成
―「創造性豊かなテクノロジスト」の育成を目指してー
三条市立大学 学長 アハメド シャハリアル

秋田県 産業労働部長 佐藤  徹
聞き手:一般財団法人 日本立地センター 常務理事・産業立地部長 高野 泰匡

誘致人列伝
北海道函館市 経済部 企業立地担当 主査 田村 亮 氏

研究ノート
【講演録】自動車産業の「100年に一度の大変革」
―クルマの電動化で産業、暮らしはどう変わるのか―
Gemba Lab株式会社 代表 安井 孝之

Topics
和歌山県が隈研吾建築都市設計事務所との包括連携協定を締結

企業立地の動き
2021年12月・2022年1月分(80件)

伏流水


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